2021.08.02 第3回衛生コラム 食品衛生法の改正について(後編)

アルちゃんが、食品衛生や感染症に関する疑問を専門家の先生にお尋ねします!

第3回 衛生コラム

テーマ:食品衛生法の改正について(後編)

元 千葉県衛生指導課長、元 全国食品衛生監視員協議会会長、
現 NPO 法人食品保健科学情報交流協議会(NPO 法人食科協) 運営委員長 北村 忠夫

食品衛生法が改正され3年が経過し、6月1日から全面施行されることになりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で食を取り巻く環境は相当な部分で混乱しております。
そこで、改正の経過を再確認し、これからの取り組みについて整理してみましょう。それでは、後編です。

HACCPの義務化は、なぜ先進国を意識したのですか? 

食品衛生法が改正されるまでは、各企業の努力規定である社内規格として、食品事業者のCSRとして、民間規格のHACCPやISOの認証を得たところでありますが、例えば、米国食品安全強化法(FSMA)では輸出国が同等の衛生管理を求めています。今やHACCPは国際標準となっていたのです。(図2)
 改正食品衛生法において、HACCPを制度化したことは、法令に定める基準等は食品事業者が守る最低限のレベルであるところから、輸入食品において相手国に対し輸出の際はHACCPに基づく衛生管理をすることを求めることができるとともに、日本では日常的にHACCPに基づく衛生管理をしていると主張できます。例えば、オリンピック・パラリンピックの開催に当たりそのように海外に向けて表明できることとなります。

なぜ、ポジティプリストなのですか?

改正食品衛生法において、食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度が導入されました。食品衛生法においてはすでに添加物及び残留農薬の規格基準で用いられている制度です。
ポジティブリスト制度は、化学物質について、原則、禁止している中で、安全性を確認したものを許可するものをリスト化するものであり、対するネガティブリスト制度は、原則、禁止していない中で、安全性を否定されたもの等を禁止してリスト化するのです。(表2)ここで問題となるのは、輸入食品に使用されてる化学物質です。国内的には安全性をチェックし安全性が確認された物質はフリーにしても問題ありませんが、国内で使用されていなかった物質についてはノーチェックのため、安全性が否定されていないのでネガティブリストに記載されずに使用が可能となってしまうことです。
そのような問題を回避するために、安全なものだけをリストアップするためポジティブリスト制度が採用されました。問題としては、有用性が分かっていても、安全性確認に時間と経費が掛かるということです。

改正食品衛生法の全面施行への注意事項はありますか?

令和3年6月1日を経過に際し、国は全面施行についてはこれまで公布された政省令等の関連通知等に基づき運用することを求めております。たとえコロナ禍であっても、食生活は継続され、その安全を確保することは当然のことですので、もし、準備が遅れているならば、優先事項を明確にして、対応することであると思います。まず、営業に関することを優先することをお勧めいたします。
これについては、全面施行に合わせ厚生労働省から下記に記載の通知等が発信されていますので、ご確認ください。Q&Aについては、当面の対応として重要ですので、ぜひご確認いただけますようお願いいたします。今後においてもQ&Aは通知されますが常に最新のものを確認するようお願いいたします。

本文作成に当たり厚生労働省資料を参照しております

北村先生、ありがとうございました。